コンテクストとは何ですか?
Q:コンテクストという言葉が人事領域で使われるときはどういう意味でしょうか。
A:「コンテクスト」(Context)は文脈、脈絡、状況と訳され、コミュニケーションの基盤となる『文化の共有度合い』といった意味で使われます。
コンテクストにおいて、ハイコンテクスト文化・ローコンテクスト文化という言葉が使われることがあります。
ハイコンテクスト文化とは、文化の共有度合いが高く、いちいちすべてを言葉で説明しなくても察し合うことでわかる文化のことです。ローコンテクスト文化はその逆で、明確な言葉での説明が求められる文化のことを指します。
日本はハイコンテクスト文化だと言われており、欧米・ロシア・中国などはローテクスト文化だといわれています。
近年ビジネスにおいてもグローバル化が進み、この文化の違いが、会議などのコミュニケーションをとる場面において困惑の原因となっているケースもみられるようです。
ハイコンテクスト文化は、表情・声色・身振り手振りなど、言葉ではない部分からの情報を活用する点に特徴があります。
また、事前に知っている共通の情報や文化的な背景を前提としたコミュニケーションを取ります。そのためよく言われる「空気を読む」「あうんの呼吸」といったコミュニケーションが可能となるのです。
一方、ローコンテクスト文化では、すべての物事を言葉明確に示そうとします。直接的でわかりやすい表現や明示的な表現を好むため、意見をいわない人はなかなか評価されることはありません。
こういった文化の違いがあるため、日本人は「意見を言わない」「はっきり言わないのでわかりづらい」といった印象を持たれる結果になるのです。
なぜ文化の差があるのか
アメリカの文化人類学者のエドワード・ホール氏が世界の主要国を調査して出した見解によると、文明国でも日本のように言語の数が少ない国ではハイコンテクスト文化になることが多く、英語圏のように言語の数が多くて、話し手が適切な言葉を選ばないと理解し合えない国はローコンテクスト文化になることが多いようです。※言語の数でいうと日本は約13万語、英語は約100万語といわれています。
また、日本人は定着居住型かつ農耕社会だったため、そこまで多い言語がなくともやりとりが可能だったのに対し、欧米は移動居住型の狩猟社会だったため、「方角」「距離」などの言語のコンテンツが多く、はっきりと説明しないとやりとりが成り立たなかったという、ルーツによる影響もあると考えられています。