エン・ジャパンの教育サービスは何をしているのか?

前回は、エン・ジャパンで行っている評価領域のサービスについて、サービス責任者の勝又さんに話を伺いました。
今回は教育領域についてお話を伺っていきます。

勝又 康仁 氏
エン・ジャパン株式会社 教育評価サービス 責任者
▼twitter:@katsumata_en
㈱ビジネスコンサルタントにて、営業・営業マネジメント経験を経てエン・ジャパンに入社。人材開発および人事評価コンサルタント、グループマネージャーを経て現職。“誰もが自己実現できる社会をつくる”というミッションを掲げ奮闘中。
勝又さん、今回もよろしくお願いします。エン・ジャパンの教育サービスについて、まずは概要をお聞きできますか?
_エン・ジャパンの教育サービスは大きく2つあります。1つは「eラーニング形式のサービス」です。オンデマンドで講座を視聴できるものです。もう1つは「集合研修」です。これは日時や場所を指定して、そこで受講者が集まって研修を受けるものです。だいたい半日から、2日間程度の研修が多いです。
直近ではコロナ禍ということもあり、このeラーニングの需要が特に高まりました。リモートが進んだことでeラーニングそもそものニーズが増えたこと、加えて集合研修のオンライン化が急速に広まったことが要因です。我々も、ウェブ会議サービスなどを利用して対応を進めました。
有難うございます。教育サービスについて、力を入れていることはありますか?
_教育サービスについて力を入れているポイントは3つです。
①動機づけ
②プログラム内容
③効果測定
まず、動機づけについてですが、昨今は「学びたいものは何でも自由に学べる時代」と言えます。スマートフォンやパソコンにアクセスすれば各人が知りたいことをすぐ知ることが出来る時代において、まずもって重要になるのは『動機づけ』でしょう。
「コンテンツはある。見る動機はない。」というのが、教育業界の一番の課題です。つまり、今起こっているのは「情報格差」ではなく「学習意欲格差」なのです。エン・ジャパンでは、【キャリアセレクタビリティ診断】という診断をeラーニングに際し提供しています。具体的には、まず受講する前に、「自分の強みと弱みを診断」します。次に、自分の仕事の役割やキャリア希望と照らし合わせて「もっとも能力開発したほうがよいと思われる能力」を確定させてから講座の受講をはじめてもらいます。このように学習の目的を明確にすることが重要です。
意欲のない研修は効果が落ちますから、動機づけは非常に大切にしています。
話は少しそれますが、この「自分の強みと弱みを診断する」ための項目には、エン・ジャパンが考えた【CareeaSelectAbilty©】(キャリアセレクタビリティ)の考え方を用いています。
これは、【Cereea(キャリア)】【Select(選ぶ)】【Ability(能力)】を組み合わせた造語で、【キャリア自己選択力】といいます。転職や社内異動の際、様々な選択肢の中から自分の望むことを選択できるだけの能力。転じて、時代や事業、環境が変わっても、どこでも活躍できる普遍的な能力のことを意味します。
昨今はVUCA(ビジネスや市場といった世界におけるさまざまな不安定要素があり、将来予測が難しい世相を指す)といわれていますが、そのVUCA時代にこそ必要なことがCSAの考え方だと思います。
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次に、2つ目のポイントは「プログラム内容」です。何よりも「抽象的な理論ではなく実務に活かせるプログラムづくり」を意識しています。頭が良くなって知的に見えることが目的ではなく、学んだことを如何に現場の問題解決に適応していくかが重要ですから、抽象的な理論はあまり役立たないのです。
そのため講座内容は具体的につくられており、また、隙間時間に学べる工夫も凝らしています。受ける時間がなくて実践に活かせないとなると、本末転倒ですからね。
例えばエン・カレッジオンラインというeラーニングサービスでは、総講座数は400にのぼりますが、講座を構成しているチャプターだけ見ても学べるように工夫しています。チャプターまで含めて計算すれば、1講座5チャプターだとしても2000のマイクロコンテンツがあることになり、学びたいときに、学びたことを選び取れるようにしています。
最後のポイントは「効果測定」です。多くの研修は理解度テストや研修アンケートを用いた結果管理になっていることが多いようです。
ただ、冷静に考えてみると、「理解したからなに?」「研修に満足したからなに?」ということになりますよね。理解していようがいまいが、研修に満足しようがいまいが大切なのは行動がかわること、現場が変わることです。
研修内容を理解しても研修に満足しても、行動が変わらなかったら、現場は忙しいのに意味のない研修に時間を浪費しただけになってしまいます。
だからこそ、エン・ジャパンでは「行動が変わったかどうか」「組織が変わったかどうか」を効果測定の指標とすることを推奨しています。
具体的には、人事評価制度との連動です。
期初にどんな能力を開発していくか目標設定し、目標に定めた能力を開発できる教育プログラムを選択する。受講し、どのように自分の行動を変えていくのか、計画をたてる。計画において定めたアクションプランを実践する。実践して能力の発揮度合いが高めれば、もちろん期末に評価結果もよくなる。
このようなサイクルをつくることで、教育とそのあとの実践、能力開発後の人事評価と連動させているのです。もちろん、サービスとしてだけでなく、エン・ジャパンの内部の教育と評価も、このような形になっているんですよ。
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未来の企業における教育はどうなると思いますか?
―より、データ・ドリブンなものに。
よりデータ・ドリブンになっていくでしょうね。
キャリアセレクタビリティ診断のことをお伝えしましたが、この診断結果をもとに受講講座のレコメンドを行うこともこの1つでしょう。
診断結果をデータでシステムにインプットしたら、今後は自分の弱みを克服するための適切な講座をレコメンドすることも可能。これは、実際にタレントビューアーを使えばすでに可能ですよね。
学習者1人ひとりに最適な学習内容を提供することで、より効率的、効果的な学習を実現する方法のことをアダプティブラーニングと言いますが、これはBtoCのほうが先行しているといわれています。たとえば、塾とか英語学習などですね。一問一答形式で問題を出題できるとアダプティブ化しやすい。また、受講後の効果測定についても同様です。
ちゃんとデータを管理していけば、研修で学んだことを実践している人は誰か、または、実践度も計測していくことができます。そうすると、誰に教育投資していけばよいかもわかるし、実践度の高いプログラムはどれかもわかります。
能力開発がなされて行動が変われば手段は何でもよい
ちなみに、僕は「別にeラーニングを受講しなくてもよい」と思っています。(笑)それは、目的は受講でなくて、行動変容だからです。
研修がなくても行動が変わる支援をする、それが究極の目標です。でも、それを実現するためにデータを取り続けていく必要はあると思っています。そのほうが、PDCAを回していけますよね。
ありがとうございます。最後に、今後の教育について、一言お願いします。
教育はアナログ文化にまみれてきた
教育は良くも悪くもアナログ文化が強いと思います。データをとることもしてこなかった。
だからこそ、伸びしろのある分野でもある、と考えています。
エン・ジャパンは
▼研修前の動機づけ
▼プログラムのマイクロ化
▼評価との連動による行動変化にフォーカス
▼データ・ドリブン化
を軸にこれからも教育サービスをブラッシュアップしていきます。